リサがハイネルたちと暮らし初めて早数ヶ月。
さすがにいわゆる「愛の巣」に転がり込むのはどうだろうと一応は固辞してみたものの、逆に二人そろっての「一人暮らしは心配だから」の一言で押し切られ、リサはしぶしぶ二人の提案に従った。
もちろん黙っていても三食おやつ付き家賃ゼロ、基本の家事はハウスメイドがやってくれ、本も設備も揃っていてこれほど理想的な環境はそうそうないわけではあるが。
が、しかし。
明け方までレポートをでっちあげるために起きていたせいで、普段よりも地球の重力を密に感じるそんな朝。リサが朝の食卓につくと、既に適度に走り込んできたのか、二人揃って「でき上がって」いた。
「おはよう、リサ」
「モーニン、リサちゃーん」
「・・おはよう、お兄ちゃん、グーデリアンさん。今日はオフだったんじゃ・・」
「あぁ、せっかくの休みだから楽しまないとな」
「だからって朝っぱらからジョギングつきあわせることないじゃなーい」
「馬鹿者、基礎体力は一日休んでも落ちていくんだ」
「はいはーい」
普通、オフっていえば寝坊とかさー・・普段からテンション高いんだからそんなに上がりっぱなしだと血管切れるよとか思いつつ、リサはあくびをかみ殺してオレンジジュースに手を伸ばす。
「そういえば、関連会社から新しいオイルの試作品が来ていたな。市販車用だが」
「じゃあ、ちょうど俺のバイク、最近ちょい重いから変えてみる?」
「あぁ、じゃあついでについでにプラグ類も変えておこう。スペアはあったかな」
毎日の食卓までここまでモータースポーツ一色だとは思わなかった。
リサは良く焼けたトーストにジャムをのせ、頭の上を通過する会話を聞き流しながらがりがりとかじる。
「最近、シュティールが俺の気持ちに近いってーの?なんかうれしくってさー。」
世間的には「仕事」熱心ではないイメージの強いグーデリアンだが、そもそもは根っからのドライバーである。いいマシンを与え、飽きさせることさえなければその情熱はレースに向かう。むしろ、ゴキゲンなタイムをたたき出すことはセックスよりも刺激的だとさえ言う。
正直、男ってそんなもんかね?とリサは思うわけだが。
「あたりまえだ。私がテストをしているのだ。適切なデータがフィードバックされて当然だ」
テストドライバーに必要なものは、体力・忍耐力・技術・そして分析力。どれをとっても兄は世界最強なわけで。
しかしいくら人体工学関連の研究者でもあるリサが助言し、シュティールそのものの乗りやすさが安定してきたとはいえ、 体力が無いからシュティールをあきらめたはずの兄が15時間もぶっ続けでテストを行うのを見て、リサはこの兄はどこかでロボットと入れ替わったのではないかと結構真剣に電源を探してみたことすらある。
「だからかな。ハイネル、俺、走るたびにシュティールがハイネルに近くなる気がする」
「そうだな、私は出来るだけお前を傷つけたくないから・・」
二人の目線がなんとなく怪しく絡みはじめる。これで今日はバイクのメンテナンスはお預けと決定した。
「・・ごほん」
リサのわざとらしいせき払いに、二人は「は」という顔をし、一斉に元のモードに戻った。
「あ・・・・いや、仕事の話だ!、な!」
「っお・・そうそう!!そうなんだよ!!」
「はいはい、じゃ私、今日はゼミでその後ゼミコンだから。夜まで帰りませーん。いってきまーす。」
リサは食べ終わった皿を重ねると食洗機につっこみ、食卓を後にした。
今更必死でイイワケしなくても、この二人の関係はもう世界公認なわけで。
それに気づいてないのは世界中で本人達だけ。まったく不思議なことに。
「・・ま、いいけど」
世界最大級の凸凹カップルを兄と義兄に持ってしまった不幸な少女は大きく伸びをし、肩にリュックを背負い直すと、青空の下を駅に向かって走り出した。
さすがにいわゆる「愛の巣」に転がり込むのはどうだろうと一応は固辞してみたものの、逆に二人そろっての「一人暮らしは心配だから」の一言で押し切られ、リサはしぶしぶ二人の提案に従った。
もちろん黙っていても三食おやつ付き家賃ゼロ、基本の家事はハウスメイドがやってくれ、本も設備も揃っていてこれほど理想的な環境はそうそうないわけではあるが。
が、しかし。
明け方までレポートをでっちあげるために起きていたせいで、普段よりも地球の重力を密に感じるそんな朝。リサが朝の食卓につくと、既に適度に走り込んできたのか、二人揃って「でき上がって」いた。
「おはよう、リサ」
「モーニン、リサちゃーん」
「・・おはよう、お兄ちゃん、グーデリアンさん。今日はオフだったんじゃ・・」
「あぁ、せっかくの休みだから楽しまないとな」
「だからって朝っぱらからジョギングつきあわせることないじゃなーい」
「馬鹿者、基礎体力は一日休んでも落ちていくんだ」
「はいはーい」
普通、オフっていえば寝坊とかさー・・普段からテンション高いんだからそんなに上がりっぱなしだと血管切れるよとか思いつつ、リサはあくびをかみ殺してオレンジジュースに手を伸ばす。
「そういえば、関連会社から新しいオイルの試作品が来ていたな。市販車用だが」
「じゃあ、ちょうど俺のバイク、最近ちょい重いから変えてみる?」
「あぁ、じゃあついでについでにプラグ類も変えておこう。スペアはあったかな」
毎日の食卓までここまでモータースポーツ一色だとは思わなかった。
リサは良く焼けたトーストにジャムをのせ、頭の上を通過する会話を聞き流しながらがりがりとかじる。
「最近、シュティールが俺の気持ちに近いってーの?なんかうれしくってさー。」
世間的には「仕事」熱心ではないイメージの強いグーデリアンだが、そもそもは根っからのドライバーである。いいマシンを与え、飽きさせることさえなければその情熱はレースに向かう。むしろ、ゴキゲンなタイムをたたき出すことはセックスよりも刺激的だとさえ言う。
正直、男ってそんなもんかね?とリサは思うわけだが。
「あたりまえだ。私がテストをしているのだ。適切なデータがフィードバックされて当然だ」
テストドライバーに必要なものは、体力・忍耐力・技術・そして分析力。どれをとっても兄は世界最強なわけで。
しかしいくら人体工学関連の研究者でもあるリサが助言し、シュティールそのものの乗りやすさが安定してきたとはいえ、 体力が無いからシュティールをあきらめたはずの兄が15時間もぶっ続けでテストを行うのを見て、リサはこの兄はどこかでロボットと入れ替わったのではないかと結構真剣に電源を探してみたことすらある。
「だからかな。ハイネル、俺、走るたびにシュティールがハイネルに近くなる気がする」
「そうだな、私は出来るだけお前を傷つけたくないから・・」
二人の目線がなんとなく怪しく絡みはじめる。これで今日はバイクのメンテナンスはお預けと決定した。
「・・ごほん」
リサのわざとらしいせき払いに、二人は「は」という顔をし、一斉に元のモードに戻った。
「あ・・・・いや、仕事の話だ!、な!」
「っお・・そうそう!!そうなんだよ!!」
「はいはい、じゃ私、今日はゼミでその後ゼミコンだから。夜まで帰りませーん。いってきまーす。」
リサは食べ終わった皿を重ねると食洗機につっこみ、食卓を後にした。
今更必死でイイワケしなくても、この二人の関係はもう世界公認なわけで。
それに気づいてないのは世界中で本人達だけ。まったく不思議なことに。
「・・ま、いいけど」
世界最大級の凸凹カップルを兄と義兄に持ってしまった不幸な少女は大きく伸びをし、肩にリュックを背負い直すと、青空の下を駅に向かって走り出した。
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