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404 filenotfound
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「う・・・」
次の朝、いまだかつて経験のない頭痛と胃痛を堪えながら、ハイネルはなんとか身支度を整えた。

-これが、二日酔いというやつか・・
日頃理性と節制とを信条としている上、体質的にも処理能力が追いつかないという経験がなかったフランツ・ハイネルにとって、パーティーの翌日などでスタッフが撃沈している様子は不思議なものだった。
それが40歳近くになった今、はじめてわが身に降りかかっている。

-なるほど、これは辛いわけだ。・・・肝臓が経年劣化しているのかもしれないが。
大きなため息とともに、処理しきれないアルデヒドが呼気から発散される。
陸に上がった魚のようにぱくぱくと空気を求めながら、ハイネルはキッチンのドアを開けた。

「おふぁよ。」
そこには既に、立ったままトーストを一枚齧りながら、オーブンの中を覗きこんでいるグーデリアンがいた。

「・・早いな・・」
「もうそろそろ昼だぜ。腹減ったんだよ。昨日あんまりがっつり食えてないし。昨日の煮込みにチーズ載せて焼いてんだけど、お前も食べる?」
「・・・・いや、いい。」
漂う濃厚な匂いに更に胃がきりきりと痛むのを感じ、ハイネルは早々に立ち去ろうと冷蔵庫を開けた。
いつもの水を出そうとして、見慣れないボトルがあるのに気付く。
「・・・水?」
「それね、最近俺が飲んでたハワイのミネラルウォーター。軟水。こっち硬水ばかりだから先に一箱送っといたの、忘れてたんだよ。それと牛乳と持ってきて。」
グーデリアンはグラス4つと、かりかりに焼けたトースト数枚、焼き上がったグラタンをトレイに載せ、さっさとダイニングへと向かった。

「出来たてもいいんだけど、次の日のこれがうまいんだよなー。あ、でも明日は白い柔らかいソーセージ食いたいな。」
チーズがとろけるグラタンをトーストにのせ、大口で齧りつく。
その向かいによろよろと腰を下ろしたハイネルは、水をグラスに注いで一気に飲みほした。
「今日は仕事は休み?」
「本社関連は家でやる。こんな姿で出社したら父に何を言われるか・・。ラボはひと段落しているから、何かあれば連絡がくるだろう。」
「なんか、ボロボロだな。」
とろけこぼれたチーズをフォークで巻き取りながら、グーデリアンが問う。ハイネルは椅子に深くもたれかかり、頭を振った。
「・・胃が痛いから。話しかけるな。」
「ハイネル、もしかして二日酔い初めてか?」
「・・・・悪いか。」
「そういやぁ、あんまりお前つぶれてるの見たことないもんな。待ってな。」
トーストを一枚平らげたグーデリアンは手をぱんぱんと叩き、キッチンに消えると小さな瓶とスプーンとを持って現れた。
「そういう時は水ばっかじゃなくてな。蜂蜜を牛乳にいれてちょっとずつ飲むの。胃がマシになったらフルーツとか薄いスープとかな。」
グラスに半分ほど牛乳を注ぎ、金色の蜂蜜をたっぷり一匙すくってくるくると混ぜ、ハイネルに寄こす。
一口飲んで甘さに眉をひそめ、ハイネルは再び水を口に含んだ。その様子を、グーデリアンはテーブルに肘をついてにんまりと観察する。
「いい年して胃が荒れるまで飲むなよ。ほんとお前、なんでも知ってるようで案外知らないことも多いんだよな。」
「・・うるさい。」
からかう口調にむっつりと返し、それでもハイネルはまた牛乳のグラスを舐め、つぶやいた。
窓から眺めた外は既に日が高く、夏の到来を思わせる空が広がっていた。
「・・・・世間でいう飲まなきゃやってられない、という気持ちが、よくわかった。」
「んー?」
「・・・誰に相談できるものでもなかったしな。」
再びトーストを齧りつつ、グーデリアンは上目づかいにハイネルを見上げた。

普段オーナーとして次期社長として完璧な采配を揮っているはずの自分が、グーデリアンの前でだけは意外と脆くなっているのを感じたのはいつからだろう。
貯め込んでいたストレスが、ふとしたきっかけで大きな洪水を起こしてしまった。
まさかの隠し子も、自分さえ黙っておけば誰にもわからなかったはずなのに。

「あー、ヨハンのことね。」
唇についたソースを舌でなめとりながら、グーデリアンは軽く言った。
「しょうがないんじゃね?俺だって探せば一人や二人、うっかりどこかから出てくる気がするし?」
「・・軽く言うな。・・日頃バカで鈍いくせに、なんでそんな所だけ鋭いんだ。」
「・・ひっでぇ言われ方してんな。俺。」
「大体、お前は真っ先になんで彼が私の血縁者だと思ったんだ?そんなに似ているならまず父やチーフが気付くだろうに。」
「んー、目の感じが違うからなぁ。形も違うし、オトーサンもあんたも恐ろしく虹彩がきついけど、ヨハンは柔らかい感じがする。」
グーデリアンはハイネルの目を指さし、そのまま指先を首から鎖骨にかけてなぞるように下ろした。
「でも、骨格はお前と出会った時の後ろ姿にそっくりだと思うし、あとな、ヨハンが笑ってる感じがお前がその・・やった後とかの、ほけっとしてる顔?」
そこでじろっと睨まれて、グーデリアンはにっと笑って矛先をそらした。
「まぁな、俺、実家でたくさん生き物飼ってたからな。動物見分けるの得意だし、人の顔覚えるのも得意なの。」
「・・そんなことで隠し子を暴かれては大変だ。」
「まぁー・・って、お前はなんで気付いたのよ。」
「・・入社研修をチーフに2時間ほど押し付けられてな。差し迫った仕事もあったし、一つ課題を出して何を見てもいいから、どんな破天荒なアイデアでもいいから出してみるようにとほっといてみたんだ。」
「・・・・お前、そのめんどくさがり、どうにかしろよ。」
「まぁ、何か面白い発想でもあればいいなと思ってレポートを見ていたら、一つ私の考えを写したんじゃないかと思う出来のものがあってな。どこの専門機関の出身かと思って調べたら技術学校を出ただけだと言うじゃないか。」
「へぇ。すげぇ、中身がまさかのお前似か。」
「チーフに聞いてもなかなか見どころがあるらしいから、ちょっと気になって色々と調べてみたら・・・な。」
「・・・・・・っとに、お前はもう・・・。」
苦笑しながらグーデリアンは自分もグラスに牛乳を注ぎ、一気に飲み干す。

「呆れただろう。存分に笑え。」
ハイネルは椅子の背に首を預け、空を向いて自嘲気味に吐き捨てる。人生最大の失敗をよりによってパートナーに見破られるなど、さすがに言訳する気にもなれない。だが、グーデリアンが発したのは思いがけない言葉だった。
「いや、さすがだと思うよ。」
「・・嫌みか・・?」
「じゃなくて。俺もさ、よくキスだけで子供が出来そうーとか言われてるけど、未成年の時に指一本触れずにしれっと子供作ってましたーってのはさすがにできなかったわけよ。」
からからと屈託なく笑うグーデリアンに腹はない。
「それがまさか、お前に男っぷりで負ける日が来るなんてなぁ。おまけにシュティールから市販車まで、お前の遺伝子が入った車が世界中で走ってるわけだろ?もう太刀打ちできるわけないじゃん。」
両手を上げて大げさに降参のポーズをするグーデリアンに、ハイネルの顔に薄く笑みが戻る。
「・・世界の種馬にそう言われると、複雑だ。」
「そんなお前と20年もつきあってる俺、カッコいいよなぁ。」
「・・勝手に言ってろ。」
「おんや、ちょっと元気出てきた?効くだろそれ。」
ハイネルの手許から空になった牛乳のグラスを取り上げて、グーデリアンは自分の皿とともに立ち上がった。
「じゃ俺、片づけたらちょっと遊びに行ってくる。夕飯はポテト料理でうまいビール飲みたい。」
「わかった。」
上を向いたハイネルの頬に、いつも通りの温かいキスが降りてくる。

-なんでお前はそんなに私を許してくれるんだ。

付き合い始めて20年ほど。もう愛だの恋だのといった感情はなく。
この男といると世間で期待されているのとはまったく正反対の、理性的でもなく、むしろめんどくさがりで、ややこしい案件からは逃げてしまいたくなる自分の弱い部分が表面に出てきてしまう。
なのにそれを落胆するでもなく、むしろ失敗も喜々として受け入れてくれるのはなぜだろう。

キッチンから投げキッスをよこすのをしっしっと追い払いながら、ハイネルはもう一口水を口に運び、ぼんやりと窓の外を眺めた。

---------------つづく

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「お前・・・だから本命以外とヤる時のゴムは絶対自分で用意しろって!」
激昂するグーデリアンにハイネルはこめかみに細い指をあてる。
「・・即物的な物言いだな・・。」
「ティーンの時にまず親父に教わるだろ普通!」
「・・お前の家はどういう性教育をしているんだ。」
「牧場ってのは生殖産業だからな。つまりいいタイミングでやることやったらガキは出来るんだよ!」
順調に脇道に流れていく話に、ハイネルがますます眉間のしわを深くする。
「・・・・いいか、誤解するなよ。私は彼の母に指一本触れてないし、多分、会ったこともない。」
「ほ?」
垂れた目をこれ以上ないくらい丸くしたグーデリアンの動きがぴたりと止まった。


「グーデリアン・・・・精子バンクという仕組みを知っているか?」
「あぁ、まぁ。」
水を一口含み、グーデリアンはうなずいた。水の質量が喉に違和感を残して落ちていく。
ヨーロッパの硬水にも慣れてきていたはずなのに、今日は妙に舌に残る。

主に、男性不妊や遺伝子不適合によって子供をあきらめた夫婦に対して、匿名で提供された精子を提供するシステムがあることはグーデリアンも知っていた。
グーデリアン自身、『俺も有り余ってんだよなー』『お前の精子を混ぜたら、全部お前みたいなのができるんじゃねぇか』など、セクハラまがいの会話をピットでしていたこともある。
供されるのは主に健康で遺伝子に異常が少ないことが確認された若い男性のものであり、目の色や髪の色、身長など、その父親に近いタイプからランダムに選ばれる。
ただし提供の度合いにもよるが、その保管期間は短く、提供された精子は数カ月もすれば廃棄して新しいものに切り替えられるというシステムだった。

「・・高等学校の卒業前に、悪友につられて、やったことがある。」
「は?」
目を伏せて口走ったハイネルに、なんのことかと、グーデリアンは目を瞬かせた。
「どうせすぐ廃棄されるからと、たかをくくっていたんだが、それがうっかり使用されて、めでたく誕生に至っていたということらしい。」
「・・・もしかして、それがあの子?」
「おそらく。」
「ば・・馬っ鹿かよお前!いや、昔のお前の友達も!育ちと頭のいい連中は、なんでそう、馬鹿をやる時も全力でやるんだよ!」
「馬鹿にバカバカと言われたくない!私だってここ数カ月、できればタイムマシンを作って止めにいきたいと何度思ったか!」
「作っとけよタイムマシン!大体な、お前の高等学校時代の友人連中はランドル含めてちょっとやることなすこと常識外れが多すぎるんだよ!友達選べよ!」
「そういう環境だったんだから仕方ないだろう!やる時はとことんやるのがあの世界のステータスなんだ!」
不毛な言い争いに二人していつしか立ち上がっていた。ハイネルが思わずテーブルを両手でたたくと、グラスががたがたと揺れた。
その音にふっと正気になったグーデリアンが大きく呼吸をし、ハイネルの肩に手を置く。
「あのさ・・まず冷静になろうハイネル?。まさか何が何でも、その子が寄りによってこのラボで働き始めるなんて偶然、映画じゃないんだからさ。他人の空似って線はないわけ?遺伝子検査したわけじゃないだろう?」
グーデリアンの問いに、ハイネルが思わず視線をそらす。
「・・・・・・なんとなく、嫌な予感がして・・。」
「うぉ?・・えーっと、まさか本人の承諾?」
「・・ない。面談した際、飲み物を出したカップを回収して、私のカップと・・・」
「ちょ、それ・・・犯罪!」
「わかってる!でも私に他にどうしろと言うんだ!」
「落ち着け。で、結果がクロだったわけ?」
「・・出た判定は99%だから、まぁ、あと1%に賭けるという方法も・・・・」
「ねぇよ!」
今度はグーデリアンがテーブルに強く手をついた。なんとかこらえていたグラスが遂に倒れ、クロスの上に薄い染みが広がっていった。

また黙々と二人でテーブルクロスを交換し、もはや味も分からない料理をつつきながらグーデリアンはハイネルから辛抱強く状況を聞きだした。
彼の名前はヨハン・リーム。18歳で、今年技術学校を卒業したばかり。
父母は数年前に交通事故死しており、苦学してシュトルムツェンダーに入社したらしい。兄弟はいない。
当たり前であるが、精子ドナーは極秘事項であるため、おそらく両親が精子バンクを利用したことは知らない。

以上より、遺伝子的にはハイネルが父親である(1%の例外を除いて)ということは知らせる必要はないし、まさか勝手に遺伝子検査をしたなどとは決して口外してはならないという結論に至った。
その晩のハイネルは次から次へとグラスをあおり、酒にはやたら強いはずなのにやがてぐったりとソファに倒れ込んだ体を、グーデリアンはやっとのことでベッドに運んだのだった。

-------------------続く

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やがて、日が落ちかける頃、どうやって仕事を片づけたのか、滅多にない時刻にハイネルは帰宅した。
早いばかりで恐ろしく窮屈な2シーターの愛車は変わらないものの、以前借りていたラボ近くの最小限のアパートメントよりはそこそこ広い一軒家は、ハイネルの生活が一人から二人を意識したものになったことを意味していた。
グーデリアンはドイツに立ち寄るたびにその中に少しずつ私物を持ち込み、整然とした部屋に少しずつ雑然とした温かさが重ねられていた。

「土産だ。」
キッチンで玉ねぎの皮をむくグーデリアンに差し出されたビニールの袋の中には、淡い緑色のレタスが2株入っていた。
「・・なんでレタス?それも採りたて?」
「私が育てた。レタス好きだろう。」
「好きだけどさ。採りたて限定で。・・えー、その格好で?」
ネクタイを緩めているハイネルの足元はピカピカの革靴で、とても畑帰りとは思えない。
「第一、お前虫とか日光とか苦手だろ?」
ケンタッキーの農場に立ち寄った際のハイネルの『ペザント』状態を思い出し、グーデリアンは首をかしげた。
「海外へ設備移転して工場が空いていてな。何か飯のネタをという話になったので植物プラントを立ち上げた。今は社員食堂で使う分くらいは賄っているし、会社の環境イメージにも貢献しているようだ。」
「・・だから虫も日光もナシってわけね。」
「私が設計したプラントだから、一応私が育てたことになるだろう。」
「お前、毎回うまいこと会社の経費で自分の趣味やるよな。」
「色々こき使われているんだからそれくらい構わないだろう。着替えてくる。」
鞄を小脇に抱え、ハイネルは自室へ去って行った。


「でな、チーフ・・じゃなくて、今は監督か。あの後会ったんだよ。」
「荒れていただろう。最近娘さんが結婚したらしい。」
戻ってきたハイネルがエプロンをかけ、フードプロセッサーで野菜を刻む間に、グーデリアンがロメインレタスと卵でサラダを作り、冷蔵庫に入れる。
さほど広く見えはしないのに大男2人の動線がまったくかぶらない台所はハイネルの設計なのだろう。今度は住宅事業にも乗り出しそうだとグーデリアンは密かに思った。
「あー。『転戦ばかりで俺の知らないうちに成人してて、今度はついにどこかの馬の骨野郎と結婚するってんだぞ!?』って言ってた。」
グーデリアンは大げさな身振りでチーフの仕草を真似る。
「私も聞かされた。」
「『俺の人生設計、お前らに台無しにされたんだ!』はお決まりだよな。・・そもそも、社長にハイネルのお守りを押し付けられたところからあのオッサンの悲劇は始まってんだよなぁ。」

『俺は仕事はそこそこして、休日には目いっぱい家族サービスをするんだ。』
だから給料もそこそこで生活が保障されていれば文句がないと、ささやかな夢を抱いていた現場叩き上げのチーフエンジニアは技術学校を出て迷わずドイツを代表する企業、シュトロブラムスの工員となった。
武骨な外見ゆえやや結婚は遅れたが、家を守る優しい妻と娘二人に恵まれ、その技術と面倒見の良さも買われて着々といい若頭的ポジションを築きつつあった。
それなのに。
『私の息子がレースに興味があるらしくてね。君、休日に時間があったらちょっと手伝ってやってくれないか?』
そんな時、現場にちょくちょく出入りしていた、金色の目をした若造の誘いにのったのが不幸の始まりだった。
どうせ基礎教育低学年のカート程度だろうと、高等教育へ進んでこれから学費がかかるであろう娘のために少しでもと思って二つ返事で引き受けたところ、実際やってきたのは既に自分の胸ほどにも身長のある少年で。
もうカートなどではそこそこの実績を上げていて、目指すカテゴリーはまさかのCF。
話が違うと苦情を言いに行った先で通されたのはまさかの重役室。
へらへらした優男はやり手と噂のまさかの社長の三男で、実は自分よりも年上、かつ大きな息子がいたと知った時はすでに引き返せない状況に追い込まれていた。

「その件に関しては、悪いのは私じゃない。」
「・・魔性だよなぁ。おとーさん・・。でも、本社仕事忙しくなったからってチーム監督押し付けたのはあんただろ?」
「まぁ・・そこにはすこし罪悪感がないわけでもないが。適任者がいなかったから。」
ハイネルが肉をこね、スパイスを炒める。いつも十分に煮込む時間がとれないのはわかっているので、本宅のコックがもたせてくれる冷凍スープや市販の缶詰を使って味を調え、圧力鍋に入れていく。
時々ため息を挟んでは首をかしげる仕草をするのが何か気にかかるが、その間にグーデリアンはダイニングのテーブルに、ワインとチーズとパンを準備した。
ワインは今年の葡萄で作った白。甘さと果汁感がまだ残るがこの時期だけの飲み物だ。
一緒に、オリーブの新漬けも皿に出す。これはグーデリアンがドイツに来た頃、初めて食べて衝撃を受けたものだった。
なんとはなく重い空気の中、いい匂いが漂い始めたが、ハイネルは窓の外を眺めたりして心ここにあらずと言った様子で。葡萄とオリーブをつまみにワインの味見をしはじめたグーデリアンにも小言を飛ばさない。
やがてダイニングで出来上がった温かい皿を前にしても、ハイネルはフォークを持ったまま何事か考え事をしている。
グーデリアンがそろそろどうしたものかと思い始めたころ、ハイネルは独り言のように呟いた。

「グーデリアン。私によく似た青年、のことだが。」
「ん?」
「多分。私の子供、だ。」
「は?」
思いがけない言葉に、グーデリアンは思わずフォークを取り落とした。

------------------------つづく

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『こちらはリコール対応でしばらく忙しいから帰ってこなくていい。
ECUが突然制御を失って暴れまわったかと思うと周りを巻き込んで過熱・発火に至るようだ。
現在ハード・ソフト両面から洗いだし中だが、悪質なのでとりあえずJG現象と名付けておいた。』


「・・・・・・・・・・あー・・根に持ってやがるなこいつ。」

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『撮影長引いてて、次そっちいけるのは8日くらいになりそ。半端にオフ出来たから一旦ケンタッキー帰る。』

『親父が最近すっごい血統の馬買ってた。鹿毛。名前まだっていうからプリンスにしてやった(笑)。お前が今度来る時までに人慣れさせとくからまたうちこいよ。』

『・・・・プリンスな、足癖悪いわ噛み癖あるわでもう大変。調教師逃げた。あの血統のがこんな値段で買えたって時点で気付けよ親父!』

『プリンス、なんとか俺は乗せてくれるようになった。相変わらず他のスタッフは逃げ腰だ。撮影までに傷だらけになりそうだよ俺。「お前、牝馬専門じゃなかったのか」って誰のせいだよ反省しろよクソ親父!』

『今日やっとプリンスと遠出したけれど、俺が行く方向ときれいに逆行こうとすんの!可愛くねぇ!』

『最近、やっとプリンスのやりたいことが分かってきた。すました顔して案外単純だったみたいだこいつ。存分に走れなくてストレス溜まってたみたいで、一日気長に付き合ってやったらすげぇフレンドリーになった。まだヘタな奴が乗ると1分以内に落とすけど。』

『慣れてくると、プリンスがすげぇ実は頭がいいのがわかった。こいつ、気に入らない人の指示はわからないふりをしていただけみたいだ。・・性格悪いな・・誰かさんみたいだ。』

『今日もプリンスと走ってた。そろそろ撮影戻らなきゃいけないから、しばらくプリンスと会えないのが辛いな。ドイツに委託できそうな牧場あったらいいんだけど。』

『撮影終わった。予定変更してプリンスに一度会ってから帰る。あ、妬いてんなよハイネル。』




『・・なんでわかったの?プリンスの本名がプリンス・フランツだって。』

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