「お前・・・だから本命以外とヤる時のゴムは絶対自分で用意しろって!」
激昂するグーデリアンにハイネルはこめかみに細い指をあてる。
「・・即物的な物言いだな・・。」
「ティーンの時にまず親父に教わるだろ普通!」
「・・お前の家はどういう性教育をしているんだ。」
「牧場ってのは生殖産業だからな。つまりいいタイミングでやることやったらガキは出来るんだよ!」
順調に脇道に流れていく話に、ハイネルがますます眉間のしわを深くする。
「・・・・いいか、誤解するなよ。私は彼の母に指一本触れてないし、多分、会ったこともない。」
「ほ?」
垂れた目をこれ以上ないくらい丸くしたグーデリアンの動きがぴたりと止まった。
「グーデリアン・・・・精子バンクという仕組みを知っているか?」
「あぁ、まぁ。」
水を一口含み、グーデリアンはうなずいた。水の質量が喉に違和感を残して落ちていく。
ヨーロッパの硬水にも慣れてきていたはずなのに、今日は妙に舌に残る。
主に、男性不妊や遺伝子不適合によって子供をあきらめた夫婦に対して、匿名で提供された精子を提供するシステムがあることはグーデリアンも知っていた。
グーデリアン自身、『俺も有り余ってんだよなー』『お前の精子を混ぜたら、全部お前みたいなのができるんじゃねぇか』など、セクハラまがいの会話をピットでしていたこともある。
供されるのは主に健康で遺伝子に異常が少ないことが確認された若い男性のものであり、目の色や髪の色、身長など、その父親に近いタイプからランダムに選ばれる。
ただし提供の度合いにもよるが、その保管期間は短く、提供された精子は数カ月もすれば廃棄して新しいものに切り替えられるというシステムだった。
「・・高等学校の卒業前に、悪友につられて、やったことがある。」
「は?」
目を伏せて口走ったハイネルに、なんのことかと、グーデリアンは目を瞬かせた。
「どうせすぐ廃棄されるからと、たかをくくっていたんだが、それがうっかり使用されて、めでたく誕生に至っていたということらしい。」
「・・・もしかして、それがあの子?」
「おそらく。」
「ば・・馬っ鹿かよお前!いや、昔のお前の友達も!育ちと頭のいい連中は、なんでそう、馬鹿をやる時も全力でやるんだよ!」
「馬鹿にバカバカと言われたくない!私だってここ数カ月、できればタイムマシンを作って止めにいきたいと何度思ったか!」
「作っとけよタイムマシン!大体な、お前の高等学校時代の友人連中はランドル含めてちょっとやることなすこと常識外れが多すぎるんだよ!友達選べよ!」
「そういう環境だったんだから仕方ないだろう!やる時はとことんやるのがあの世界のステータスなんだ!」
不毛な言い争いに二人していつしか立ち上がっていた。ハイネルが思わずテーブルを両手でたたくと、グラスががたがたと揺れた。
その音にふっと正気になったグーデリアンが大きく呼吸をし、ハイネルの肩に手を置く。
「あのさ・・まず冷静になろうハイネル?。まさか何が何でも、その子が寄りによってこのラボで働き始めるなんて偶然、映画じゃないんだからさ。他人の空似って線はないわけ?遺伝子検査したわけじゃないだろう?」
グーデリアンの問いに、ハイネルが思わず視線をそらす。
「・・・・・・なんとなく、嫌な予感がして・・。」
「うぉ?・・えーっと、まさか本人の承諾?」
「・・ない。面談した際、飲み物を出したカップを回収して、私のカップと・・・」
「ちょ、それ・・・犯罪!」
「わかってる!でも私に他にどうしろと言うんだ!」
「落ち着け。で、結果がクロだったわけ?」
「・・出た判定は99%だから、まぁ、あと1%に賭けるという方法も・・・・」
「ねぇよ!」
今度はグーデリアンがテーブルに強く手をついた。なんとかこらえていたグラスが遂に倒れ、クロスの上に薄い染みが広がっていった。
また黙々と二人でテーブルクロスを交換し、もはや味も分からない料理をつつきながらグーデリアンはハイネルから辛抱強く状況を聞きだした。
彼の名前はヨハン・リーム。18歳で、今年技術学校を卒業したばかり。
父母は数年前に交通事故死しており、苦学してシュトルムツェンダーに入社したらしい。兄弟はいない。
当たり前であるが、精子ドナーは極秘事項であるため、おそらく両親が精子バンクを利用したことは知らない。
以上より、遺伝子的にはハイネルが父親である(1%の例外を除いて)ということは知らせる必要はないし、まさか勝手に遺伝子検査をしたなどとは決して口外してはならないという結論に至った。
その晩のハイネルは次から次へとグラスをあおり、酒にはやたら強いはずなのにやがてぐったりとソファに倒れ込んだ体を、グーデリアンはやっとのことでベッドに運んだのだった。
-------------------続く
激昂するグーデリアンにハイネルはこめかみに細い指をあてる。
「・・即物的な物言いだな・・。」
「ティーンの時にまず親父に教わるだろ普通!」
「・・お前の家はどういう性教育をしているんだ。」
「牧場ってのは生殖産業だからな。つまりいいタイミングでやることやったらガキは出来るんだよ!」
順調に脇道に流れていく話に、ハイネルがますます眉間のしわを深くする。
「・・・・いいか、誤解するなよ。私は彼の母に指一本触れてないし、多分、会ったこともない。」
「ほ?」
垂れた目をこれ以上ないくらい丸くしたグーデリアンの動きがぴたりと止まった。
「グーデリアン・・・・精子バンクという仕組みを知っているか?」
「あぁ、まぁ。」
水を一口含み、グーデリアンはうなずいた。水の質量が喉に違和感を残して落ちていく。
ヨーロッパの硬水にも慣れてきていたはずなのに、今日は妙に舌に残る。
主に、男性不妊や遺伝子不適合によって子供をあきらめた夫婦に対して、匿名で提供された精子を提供するシステムがあることはグーデリアンも知っていた。
グーデリアン自身、『俺も有り余ってんだよなー』『お前の精子を混ぜたら、全部お前みたいなのができるんじゃねぇか』など、セクハラまがいの会話をピットでしていたこともある。
供されるのは主に健康で遺伝子に異常が少ないことが確認された若い男性のものであり、目の色や髪の色、身長など、その父親に近いタイプからランダムに選ばれる。
ただし提供の度合いにもよるが、その保管期間は短く、提供された精子は数カ月もすれば廃棄して新しいものに切り替えられるというシステムだった。
「・・高等学校の卒業前に、悪友につられて、やったことがある。」
「は?」
目を伏せて口走ったハイネルに、なんのことかと、グーデリアンは目を瞬かせた。
「どうせすぐ廃棄されるからと、たかをくくっていたんだが、それがうっかり使用されて、めでたく誕生に至っていたということらしい。」
「・・・もしかして、それがあの子?」
「おそらく。」
「ば・・馬っ鹿かよお前!いや、昔のお前の友達も!育ちと頭のいい連中は、なんでそう、馬鹿をやる時も全力でやるんだよ!」
「馬鹿にバカバカと言われたくない!私だってここ数カ月、できればタイムマシンを作って止めにいきたいと何度思ったか!」
「作っとけよタイムマシン!大体な、お前の高等学校時代の友人連中はランドル含めてちょっとやることなすこと常識外れが多すぎるんだよ!友達選べよ!」
「そういう環境だったんだから仕方ないだろう!やる時はとことんやるのがあの世界のステータスなんだ!」
不毛な言い争いに二人していつしか立ち上がっていた。ハイネルが思わずテーブルを両手でたたくと、グラスががたがたと揺れた。
その音にふっと正気になったグーデリアンが大きく呼吸をし、ハイネルの肩に手を置く。
「あのさ・・まず冷静になろうハイネル?。まさか何が何でも、その子が寄りによってこのラボで働き始めるなんて偶然、映画じゃないんだからさ。他人の空似って線はないわけ?遺伝子検査したわけじゃないだろう?」
グーデリアンの問いに、ハイネルが思わず視線をそらす。
「・・・・・・なんとなく、嫌な予感がして・・。」
「うぉ?・・えーっと、まさか本人の承諾?」
「・・ない。面談した際、飲み物を出したカップを回収して、私のカップと・・・」
「ちょ、それ・・・犯罪!」
「わかってる!でも私に他にどうしろと言うんだ!」
「落ち着け。で、結果がクロだったわけ?」
「・・出た判定は99%だから、まぁ、あと1%に賭けるという方法も・・・・」
「ねぇよ!」
今度はグーデリアンがテーブルに強く手をついた。なんとかこらえていたグラスが遂に倒れ、クロスの上に薄い染みが広がっていった。
また黙々と二人でテーブルクロスを交換し、もはや味も分からない料理をつつきながらグーデリアンはハイネルから辛抱強く状況を聞きだした。
彼の名前はヨハン・リーム。18歳で、今年技術学校を卒業したばかり。
父母は数年前に交通事故死しており、苦学してシュトルムツェンダーに入社したらしい。兄弟はいない。
当たり前であるが、精子ドナーは極秘事項であるため、おそらく両親が精子バンクを利用したことは知らない。
以上より、遺伝子的にはハイネルが父親である(1%の例外を除いて)ということは知らせる必要はないし、まさか勝手に遺伝子検査をしたなどとは決して口外してはならないという結論に至った。
その晩のハイネルは次から次へとグラスをあおり、酒にはやたら強いはずなのにやがてぐったりとソファに倒れ込んだ体を、グーデリアンはやっとのことでベッドに運んだのだった。
-------------------続く
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もちろんそれらの作品とはなんら関係はありません。
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