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「・・・・・・・・何をしに来たこのバカ。」

冷たい水をはったバスタブの横に跪き、Tシャツから出した両腕を漬けたハイネルの口からは、真っ先に険呑なセリフが飛び出した。

「・・怒ってるぅ?」
他の人間ならば縮みあがるような鋭い視線と言葉を気にする様子もなく、右腕に大量のタオルと、左腕に大きな袋を持ったグーデリアンはへらへらとクラシカルな白いバスタブの横にしゃがみこんだ。
「痛そうだなぁ。」
「・・・誰のせいだと?」
「だから、あれこれかき集めてきたんだよ。見せてみな。」
袋を持ち上げて見せるグーデリアンから、ハイネルはぷいっと視線をそらす。
「たかが日焼けだ。冷やして炎症を抑える他にないんだからさっさと自分の部屋に帰れ。」
たかが・・といった腕は、水面から見えるだけでも肘から先がまだ真赤でひどく痛々しい。
-うわ、イタそ。
グーデリアンは思わず眉をひそめた。

今日の午後の予選で、いつものごとくうろうろと姿を眩ませたグーデリアンを追いかけ、ハイネルはうっかりレーシングスーツの上半身をはだけたまま照り返しの強いサーキット内を1時間弱も走り回ってしまったのだ。
帽子をかぶり日焼け止めを塗っていた顔と、タオルをかけたままでいた首まではなんとか致命傷を免れたが、アンダーシャツから出ていた腕は予選が終わる頃には赤く熱を持って痛み始めた。
頭に血が上った自分の愚かさを恥じ、平気な顔を装って予選後のミーティングまでをこなしたハイネルではあったが、いつものように着替えたシャツのカフスをかちりと止めないのをグーデリアンは見逃さなかった。

「つか、疲れてるんだろ?そこで朝まで腕を冷やしてるつもり?」
「このままではレーシングスーツが着られない。半日冷やせば大分楽になる。それより早く休め。スタッフに迷惑をかける気か。」
こういった場合のハイネルの頑固さはたとえ付き合いの長いチーフでも手におえない。
ふぅ、と大きなため息をつき、グーデリアンは大荷物を両手に抱えたまま、バスルームから出て行った。

ドアが閉まるのを確認し、ハイネルは再び陶器の浴槽の縁に顔を預けた。
なめらかな冷たさがやや火照った頬に心地よい。日中の疲れがどっとこみあげてきて、意識を持って行かれそうになる。
いっそこのまま波に流されてしまおうかと目を閉じた時、再びドアが開く音が聞こえた。

「・・な?」
見上げると、そこに立っていたのは、出て行ったはずのグーデリアンだった。
先ほど持っていた荷物は両腕にはなく、代わりにグーデリアンは跪くとハイネルの床に投げ出された膝裏と、浴槽に腕を預けて無防備な脇の下に太い腕を差し入れた。
「っ、と。持ち上がるかな?」
突然ぐっと力を入れられ、あわてたハイネルは思わずバスタブから腕を上げた。
「ちょ、待て、腰を痛める!」
「わかってたら協力する!。ほら、腕は首!。」
咄嗟に抱きついた厚い胸板は、まるで鎧のような感触で。
「うわ、腕冷たっ!」
笑いながらグーデリアンは、開け放したドアからベッドルームへさっさとハイネルを運びあげた。

「はい、到着~っと。」
上掛けを剥がれたベッドにやすやすと横たえられ、抗議の声を上げようとするハイネルの傍らで、グーデリアンは袋の中身をごそごそと取り出し始めた。
「大事な体なのはお前もだろ?。平気な顔してたけどこの色じゃん。みんな心配してたぜ?お前、ちょっと人に迷惑かけることを覚えろよ。」
それぞれの腕の下に厚く畳んだバスタオルを敷き、柔らかい保冷剤を載せた上にさらに薄手のタオルをかけ、ハイネルの腕をそっと横たえる。
水から揚げられ、再び火照り始めた腕にローション剤をたっぷりと擦りこんだ上から、丁寧に薄くクリームのようなものを塗っていく。
「・・なんだそれは?」
「寝てろって。」
首を起こそうとするハイネルの頭を、有無を言わせず枕に押し戻す。
「火照りを押さえる化粧水。女の子達がよく使ってるのを一本もらってきた。クリームは弱い消炎剤。ドクターも日焼けは火傷の一種だって言ってたぜ?本当はしっかり冷やしてからがいいんだって言ってたけどなぁ。」
処置の終わった腕の上から再びタオルを被せ、上にも保冷剤を載せてバスタオルの端で包む。
両腕を保冷剤でパックしてしまうと、グーデリアンはハイネルの胸から下に上掛けをかけた。
「バスで寝るよりマシだろ。」
タオルの先から指先が出ているのを確認し、仕上げに適当に揉みほぐした小さめの保冷剤をタオルに包み、ハイネルの額から眼にかけてそっとのせた。

「冷えすぎたり、ぬるくなったら言えよ。俺、横で寝てるから。」
ごそごそと隣に質量の高い熱源が潜り込んでくる。
「たかが日焼けなのに・・」
「体質だからしょうがないだろ。そこは張り合うとこじゃねぇ。」
枕元の何かを切る音がする気配がして、空気がしんと落ち着いた。

「第一、お前、俺が同じ目にあったらいつも心配して飛んでくるだろ?」
「・・お前が雲隠れなんぞしなければこんな目にはあわなかったんだ。」
「ま、そこは悪かった。だから大人しく寝てくれ。俺も実はそろそろ限界・・・・」
ハイネルは暗闇の中で、タオルから出た指先に温かい指が絡むのを感じた。
ほどなくして、深い寝息が聞こえてくる。

-・・まったく、この馬鹿が。

体温の高い体から発される熱がじわりと体に回り、ハイネルも心地よい闇に体を預けた。

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