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-俺、今度はニューヨークにホテル買ったんだ。

突如渡されたカードキーは派手好きな持ち主にはちょっと似合わないクラッシックなデザインで。

-いつでも勝手に使っていいぜ。世話んなってるしなぁ。
-当然だ。いつの間にか下宿のみならず、実家まで私物化しおって。

典型的なアメリカのスーパースター、ジャッキー・グーデリアンは、所属をドイツに移してもアメリカの仕事も多かった。
だがアパートメントは掃除も面倒、あちこちのホテルを転居するのもなんだかんだでめんどくさい。
プライベートジェットを購入してケンタッキーから通うという案もあったが、コストや安全性を考えるとそれもあまり現実的でもない。
結局、自分を甘やかすことにかけては天才的な才能とひらめきを発揮するグーデリアンは、あちこちの都市で、そんなに大きくないが小奇麗で世話の行き届くホテルを買い、そのセミスイートの一室をねぐらにしていたのだった。

ハイネルがカバンの中から、携帯電話と間違って手触りの似たジュラルミンのカードケースを出し、そのカードの入ったページを開いたのは本当に偶然だった。

「申し訳ありません。明日朝の飛行機でそちらに飛びます。」
-よりによってロストバゲッジなんて。
ニューヨークでの仕事のついでに、デトロイトの関連会社に作成の遅れた部品サンプルを直接で持ち込む予定が、そんなときに限ってトラブルが起きるのはなぜだろう。
サンプルは幸いにも重要度が高いものではなく情報リークなどの心配はなかったが、お互い数点確認したい事項もあり、サンプルがないことには話が始まらない。
ため息をつきながらハイネルは携帯電話を切った。
-飛行機のフライト変更と、デトロイトのホテルもキャンセルの手続きをしておかなくては。
実家のコンシェルジュに頼むのも面倒で、ハイネルは次々と機械的に雑用を片付けていく。

「さて・・」
すべての連絡が終わり、いつもの定宿に宿泊しようかと思ったところで、ハイネルはクラッシックなカードキーを思い出し、ふとその電話番号をダイアルしてみたのだった。

繁華街から一本裏に入った小奇麗なホテルは年代ものではあったが、隅々まで磨き上げられていた。
穏やかそうな笑みを浮かべた老齢のマネージャーに通された部屋はグーデリアン好みに多少ミッドセンチュリー風のチェアなどが置かれていたが、こざっぱりと気持ちのよい設えでハイネルはアンティークなソファに体を預け、長かった一日におおきくため息をついた。

-疲れたな。
とりあえずシャワーを浴びたいと思ったが、自分の愛用するアメニティ類はあいにくと今頃どこかの空を飛んでいる。重い体を引きずりながら向かったシャワールームにあったのは、グーデリアン愛用の髪から体まで洗えるはずのオールインワンソープ。渋々使用してみたが、ハイネルはその使用感に閉口した。

-なんだこのボディソープは。いくらすすいでも体はぬるぬるするし髪はばさばさだ!

改めてバスタブに湯をはり、おそらくスポンサーから支給されたであろう、奇天烈な色と香りのバスボムを投げ入れた。
ブルーだと思っていたバスボムは、湯に入れると瞬間にロゼワインのようなピンク色になった。
-なんだこれは・・単にpHの問題なのだろうが・・いや・・
それでもおそるおそる体を沈めるが、どうも落ち着かない。
-・・・カクテルの中に沈んでいるようだ。
浴室中に漂うきつい香りの中で、ハイネルはさらに疲労がにじみ出てくるのを感じた。

それでもなんとか体を流し、バスローブ一枚で戻ってきたハイネルは急に空腹を感じ始めた。
近くのデリでうまいコブサラダを作る店があったなとは思いつつ、髪をおろしてしまった今ではめんどくさい。
ルームサービスを頼めばいいが所詮アメリカ。細かい指示を出すことすら面倒で。

-何か、食べるものがあればいいが。どうせやつのことだから、いろいろと溜め込んでいるに違いない。

ハイネルはミニバーの冷蔵庫を漁り、アメリカの薄いビールの缶と、やや不本意ながら缶詰カマンベールもとりだした。
棚を開ければ、オリーブの塩漬けと、ママ・マート特製のコーンド・ビーフの缶詰。ターキーのパテ。ソーダクラッカー。きゅうりのピクルスがあったのは奴としては上出来だ。
冷凍庫にはもれなくキャラメルとナッツ入りのアイスクリームがあったが、それは見なかったことにしておいてやる。

それらをローテーブルの前に並べて、小さなナイフで切り取りながらハイネルはバスローブ姿のまま軽い食事をはじめた。薄いビールは相変わらずまずかったが、それ以外はそれなりに食べられる味で、小腹が満たされたハイネルはそのままごろんとソファに横になった。

-色々あったが、明日まではゆっくりできるということか。
いつもなら仕事に奔走するところだが肝心の資料などが空の上ではどうすることもできない(肝心な部分は手持ちの端末から見られるのだが、そこまでの気力もなく)。
時間を惜しんで読みたい本なども手元にはなく、適度に空腹も満たされたハイネルはそのままうとうととし始めた。

「何してんだよお前・・・」
不意に、頭上から声がした。
いつの間にか熟睡していたことに気づいたハイネルがうっすらと目を開けると、そこには手に包みを持ち、あきれた顔のグーデリアンの姿があった。
「・・あ。」
「あー、楽しみにしていた母ちゃんのコーンドビーフの缶詰!コブサラダと一緒に食べようと・・あー!俺のビール!」
テーブルの惨状にグーデリアンが悲鳴を上げる。
ハイネルはソファから体を起こすと、まだぼんやりする頭でグーデリアンのほうを見やった。
「どうしてお前がここに・・?」
「前の仕事が早く終わったんだよ。明日来る予定だったんだけど、マネージャーがお前が来てるって連絡くれたから夜便で帰ってきたら、バスローブで食い散らかしたままソファで寝てるから誰かと思ったぜ。」
「うるさいぞ。ところでさっきコブサラダとか叫ばなかったか?」
「あーこれ?もう・・・食べる?サラダと、サンドイッチもあるけど。」
「食べる。」
クラッカーでは少々物足りなかったハイネルがうれしそうにサンドイッチの包みをごそごそ開け始めるのを見て、グーデリアンはため息をついた。
「つか、そんなところで寝ると風邪引くぞ。」
「大丈夫だろう。たぶん。」
「どっからの根拠だよ。」
小言を気にもせず、ボリュームのあるサンドイッチをもぐもぐと齧るハイネル。
「・・なんかさ、ハイネル、だんだん俺に似てきてない?」
「・・お前こそ、そんなにうるさいキャラクターだったか?」
「はぁ・・・・・・・・」

-10年も一緒にいればお互い似てくるとはいうけれど。

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