忍者ブログ
Admin*Write*Comment
404 filenotfound
[56]  [60]  [59]  [53]  [58]  [43]  [51]  [57]  [55]  [49]  [37
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「ふ・・・」
「よう。本当に、髭とか生えないのな、お前。」
頬に指を這わせる感触でハイネルは浅い眠りから揺り戻された。

「社長令息ってのも大変だよな。いつも小奇麗なフリしてさ。誰に見せるつもりなんだか。」
思春期に入っての早々の永久脱毛によって、髪と眉と睫以外の毛はきれいに処理されている磁器のような肌を節くれだった太い指が降りてくる。ヨーロッパでは珍しいことではないが、普段触られることのない部分を撫で回す感触に思わず肌が粟立つ。
「んー、ここはいつもどおりだな。俺じゃ感じないわけ?」
からかう口調で顔を覗き込むグーデリアンからハイネルは視線を逸らした。まだ体の奥がじんじんと痛む。昨夜も明け方までいいように扱われ、やっと開放されたばかりだというのにもう次が始まるのだろうかと肩を強張らせたハイネルから、グーデリアンは意外にもさらりと身を離した。
「ま、それはまた後で聞くからいいや。飯来てるから食おう。俺、腹減った。」
起き上がったグーデリアンはさっさとドアを開けて出ていく。ハイネルは重い体を起こすと、打ち捨ててあったガウンを体にまとわせて後を追った。

-二年目。移籍の条件は端的だった。
「金額はどうでもいいよ。俺、お前が抱きたいんだいよね。セフレってやつ?」
それに対してハイネルがなぜ、とかどうして、と問いかけることはなかった。脊髄反射のみで生きているこの男には無駄だとハイネルは直感的に感じたからだ。
やりたいことをやる。抱いてみたいから抱く。それだけだろう。
自分の身一つでなんとかなるものならば安いものだと、ハイネルは指定されたハワイのホテルに契約書を持って訪れた。

「お前、なんか胃に入れないとそろそろやばいぜ。」
一人がけのラタンチェアに沈みこみ、冷たい水だけをやっと口に運んでいるハイネルの前で、シャワーから出てきたグーデリアンはバスローブ姿のままエビを次々と口に放り込んでいた。律儀に3度3度届く色とりどりで贅を凝らした南国風のルームサービスは、一人分はほとんど手つかずで返されていた。
「これ、うまいよ。」
グーデリアンは極彩色のジェリーを選び、ハイネルの口元に運んだ。が、青ざめた口元は固く結ばれたままだった。
大きなガラス張りのテラスから続くプールには、切り取られた空が浮かんでいた。ハイネルはちらりとデスクに放り出されたままの契約書に目をやった。ハイネルが到着した際、グーデリアンはプールから上がるなり契約書をデスクの上に広げておくよう指差し、スーツ姿のままのハイネルに口での奉仕をさせた。その時のままだ。

「まぁ、腹減ったら適当につまんどけよ。俺、今日は出かけるけどお前どうする?」
「・・・休ませて、もらいたい。」
「そ、じゃサブのほうの寝室は入らないように言っとく。」
フルーツのたくさんのったパンケーキを大口に押し込むと、グーデリアンはクローゼットに向かって歩き去った。それを見届けるとハイネルはシャワールームへとふらつく足を運んだ。


どこからともなく甘ったるい果物の香りが混じるねっとりとした空気の中を、グーデリアンは何をするともなく雑多なダウンタウンを歩いていた。
ラフな服装と伸びかけた不精髭にサングラス、身にまとう不機嫌な空気のせいで彼が有名なレーサーだと気づくものは誰もいないのがいっそ気楽だった。

-発端は、何気ない寝言だった。
一年目の夏頃。いつもの大喧嘩の後、ハイネルがテスト中に軽い熱中症を起こして倒れたと聞き、グーデリアンは医務室へと駆けつけた。幸いにも症状は軽く、点滴を打ちながら涼しい場所で安静にすれば問題ないという話だったが、なんとなくの罪悪感からか、グーデリアンはハイネルが目を覚ますまで付き添いを申し出たのだった。
「ん・・」
一時間ほどして意識が覚醒してきたのか、ハイネルの体がうっすらと身じろぎをした。
「お、大丈夫か?」
「・・ト・・ニオ。駄目だ・・行かないで・・」
覗き込んで声をかけたグーデリアンの耳に、聞いたことのない名前が飛び込んできた。ラボの関係者ではない名前。そして、その呼び方は今までになく甘く切ない響きを含んでいた。
「ハイネル・・どうした?」
あわててハイネルの腕をつかみ、揺さ振る。ハイネルの表情が苦しげにゆがんだ。
「・・トニオ?」
涙でけぶる眼を薄く開け、かすれた声で囁いたハイネルが見せた表情はグーデリアンを震撼させた。しかしその表情は相手がグーデリアンであるとわかると途端にこわばり、きょろきょろとあたりを見回した。
「私は・・・あぁ、倒れたのか。すまない。」
額の髪をかきあげ、上体を起こすハイネルはいつも通りの表情に戻っていた。
「・・お前、うわ言でトニオって呼んでたぜ。誰?」
グーデリアンの問いかけに、ナースコールを探していたハイネルの手が一瞬止まったが、すぐにいつものそっけない口調で返された。
「昔の友達だ。看護婦を呼ぶからお前は帰ってくれ。」
「ふぅん・・」
グーデリアンはなぜか、それ以上聞き出すことはできなかった。

それから数ヶ月。そんな事件は波乱に満ちた一年目のせいでほぼ忘れ去っていたのに、ハイネルの下宿に度々訪れるようになってから、なぜかあの名前と表情が気になって仕方ない。
自分が無理を言えばハイネルは反射的に反発するが、結局は諦めたような表情を浮かべて渋々受け入れる。一度などは事故のフラッシュバックに耐え切れず、ハイネルのその身を抱きしめて眠ったことすらあったが、それでもハイネルは受け入れた。
-まさか、こういうのに慣れているんじゃ・・
半同居生活の中でも性的な香りはまったく感じさせないが、そう考えると距離のとり方などに疑問を感じる部分も多い気がする。
グーデリアンの中で湧き出した小さな暗雲は、空を覆う真っ黒な嵐へと姿を変えていった。


サブベッドルームの閉めたカーテンの隙間から、明るい光がもれている。ハイネルはぼんやりと動かない頭と体とをベッドに横たえていた。かすかに音がするのは食事の片付けとメインベッドルームのクリーニング作業だろうか。水が飲みたいが、チェストへ手を伸ばすことすら辛い。
また夜が来れば手荒く扱われるのだからせめて体を休めておきたいと思うのだが、痛む体と極度の倦怠感がそれさえ許してくれない。
口での奉仕から始まり、連夜の蹂躙。時々連れ込まれるバスルームでは、体の中まで洗われて。
次第に人間としての尊厳を削ぎとられそうになる気がして、ハイネルは自分の手の甲を歯型がつくまで噛み締めた。


「・・う?」
やっとうとうととしかけた頃、瞼の裏が急に明るくなった。ハイネルがうっすらと目を開けると、体を閉じられないように自分の手足が拘束されていることに気がついた。
「ただいまぁ。」
横から聞こえてきた能天気な声の主はベッドのふちに腰かけ、大きなアイスクリームのカップを抱きかかえていた。
「食えよ。」
目の前に差し出されたスプーンを、恐ろしく喉が渇いていたハイネルは思わず口を開け、受け入れた。喉の奥に冷たい刺激が通り抜け、糖分が弱った体にじわりと染み渡る。それが数度繰り返された。
「よくできました。」
グーデリアンは満足げに笑いながらハイネルの唇にこぼれたクリームをなめとる。真意がわからず戸惑うハイネルの体の間に、グーデリアンは自分の大きな体を押し込んだ。
「じゃ、本番いこうか。」
笑顔の中で蒼い眼が冷たい光を放っていた。


「ぁ・・あ・・」
グーデリアンの動きに沿って、拘束された手足の鎖がピンと張る。
先ほどのアイスクリームの中には一種の薬が入っていた。市販薬の簡単なカクテルだが、習慣性はないが一時的に体が弛緩し、感覚が鋭敏になる。裏の世界ではよく使われる軽い薬だ。それまで悲鳴しかあげてこなかった喉が、敏感な部分に触れられるとひくりと動く。そこを奇妙な形の玩具で、グーデリアン自身で、様々な方法で開拓されていく。
しかしグーデリアンはそれでもハイネルを解放させてはくれず、体の芯が熱く重い感覚に支配されていた。

「やっぱり、トニオじゃなきゃイケないわけ?」
体をシーツに縫い付けたまま、耳元で囁かれ、ハイネルの体がびくりとすくんだ。
「トニオって誰だよ・・なぁ、教えてくれたら楽にしてやるよ?」
まだ後ろの感覚に慣れない体を容赦なく責め立てられる。
既に声も出せないハイネルがきつく目を閉じてかぶりを振ると、グーデリアンの動きが強くなった。
「あんたも強情だね。それとも、もっといいことされたい?」
胸板合わせに抱き合い、唇を噛みしめるハイネルの中に奥深く自身を埋め込んで突き上げると、白い喉が空気を求めるように上下する。首に手をかけて顔を寄せさせ、唇に舌を差し入れるとハイネルの舌がぎこちなく応えてくる。
「・・ふっ・・うぁ・・・」
内臓の奥を突き上げられる苦痛にたえきれず、唇の隙間から吐息が零れ落ちる。
きつく閉じた目尻から一滴の雫が流れたのを見て、グーデリアンの頭の中はさらに凍てついていった。
「そこまでナイショにしたい関係って、気になるよなぁ。」
「あ・・ぁ!」
自分の腰の上に抱き上げると、さらに結合が深くなる。既にハイネルは息をすることすらままならず、苦痛を与える相手の胸に体を預け、突き上げられは喘ぐばかりだ。その姿をアイスブルーの瞳が冷たく観察していた。

突如、寝室にけたたましい電子音が鳴り響いた。グーデリアンはハイネルを膝の上に抱かえたまま、長い腕でチェストに放り出していた携帯電話を取りあげた。
「なんだよ~、いいとこだってのに。」
いまだ体内を差し抜く凶器に圧迫されつつも、動きがなくなったことで少し楽になったハイネルは少し体の力を抜き、乱れる息を整えた。漏れる音から、相手はグーデリアンのエージェントかと思われた。
「えー、俺?今ハワイ。まだバカンス残ってんだけど。え・・まぁ、そうだけど。わかったよ。終わったら連絡する。」
不機嫌に電話を枕元に放り投げたグーデリアンは、体をつなげたまま無言でハイネルの腕の拘束を解き、体をベッドに押し倒した。
「自分でやってみな。」
しびれかけた手をつかみ、ハイネル自身の上へあてがう。まるで扱いを知らない子供のように長い指がぎこちなく己を慰めはじめるのにあわせ、グーデリアンは再び動き始めた。
「あ・・ぁっ・・」
ポイントを後から責められながらの行為に、今まで感じたことのない感覚がハイネルの背筋を駆けのぼった。
「っ、すっげぇ締まる・・そう、その感覚だ。」
「は・・ぁっ・・」
開放される寸前で腕をつかまれ、再び後ろだけの感覚に戻される。しかし一度覚えた体は収まらず、登り詰めたハイネルの中で何かが弾けた。
「いや・・っ!」
頭が真っ白になり、ひくりと体が痙攣する。グーデリアンが動きを止めてやると、潤んだ緑の目が呆然と天井を見上げていた。
「やっと覚えた。」
グーデリアンはにんまりと笑い、今度は自分を開放するために再び動き始めた。

「もうちょっと楽しんでいたいんだけどな、そろそろ休暇はおしまいなんだ。」
節くれだった指が、汗で湿った茶色い髪を撫で上げる。
あれから体位を変え、グーデリアンは数度己の精を放った。一度感覚を覚えたハイネルの体は持ち主の意図に反して敏感に反応し、グーデリアンを喜ばせた。
「ま、どうせ来季も一緒のツアーなんだから、いくらでも時間はあるよな。今度はどうして欲しいか、考えといてよ。」
乱れたベッドに横たわるハイネルには既に、グーデリアンがサインした書類を受け取る力すら残ってはいなかった。

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
メール
URL
コメント
文字色
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret
  • ABOUT
ここはいわゆる同人誌といわれるものを扱っているファンサイトです。 もちろんそれらの作品とはなんら関係はありません。 嫌悪感を抱かれる方はご注意下さい。 無断コピー・転用等、お断りいたします。 パスワードが請求されたら、誕生日で8ケタ(不親切な説明・・)。
  • カレンダー
05 2025/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
  • フリーエリア
  • 最新CM
  • 最新TB
  • プロフィール
HN:
404
性別:
非公開
  • バーコード
  • ブログ内検索
  • 最古記事
(09/19)
(11/12)
(11/12)
(12/10)
(12/23)
  • カウンター
  • アクセス解析
Copyright © 404 filenotfound All Rights Reserved.*Powered by NinjaBlog
Graphics By R-C free web graphics*material by 工房たま素材館*Template by Kaie
忍者ブログ [PR]