高く澄んだ空の下、レマン湖ではF.I.C.C.Y主催のレガッタレースが行われていた。
「そういえば、今日はハイネルはどうしたんだ?オーナー枠のおじさま方に拉致されたのか?」
「ほぁ?」
グーデリアンが口いっぱいにバーベキューをほおばったところで、ブーツホルツは唐突に質問を投げかけた。
「ふぃふぉふぉと。ふぉふぃつ。」
「グーデリアンさん、さっぱわかんねぇっす・・。」
レオンがぼそっと呟いた。
「ふぉ・・・。フリッツといい、最近の若い奴はシンプルでいいねぇ。」
「お前が言うか。」
「いやん、ミーなんてまだまだシャイボーイだから。」
くねっとシナを作ってみたグーデリアンに、あちこちから「どこがだ」「ビール噴いた、返せ」等の声が聞こえた。
「いやね、ハイネルはドイツで仕事。主要スタッフも自発的に付いてっちゃったから、今日のシュトロゼックはぼろぼろなのよ。」
居並ぶ面々がうんうんとうなずく。
確かに、いつものオーナー対ドライバーの喧嘩仲裁におけるシュトロゼックのチームワークは恐ろしいほど統制がとれているのに、今日のレガッタではそれがまったく活かされていなかった。
「アオイ対策か?」
「んー、そんなとこ?でも、電話したら1.5時間くらいで来るんじゃない?」
250マイルはあるかという山越えをそのペースで走ったらさすがに苦情がくるかと思うが、あいつなら実際やりかねないな・・と思われているのがハイネルという人間である。
「ハイネルでも、あのマシンは手ごわいのか?」
「みたいねー。フリッツ会見の後、すぐドイツに帰っちゃった。・・て、ブーツホルツのダンナ、えらくハイネルのこと褒めるのね。」
「いや、実際すごいだろう。制作とドライバーとやりながら、常に上位はキープする。
コンストラクターズならスゴウでも太刀打ちできないんじゃないか?。」
「いやいやいや、そうなったら俺とブーツホルツさんのチームワークっしょそこは!」
元気よく手を挙げて発言するレオンに一同が爆笑する。
「ここ笑うとこっすか?!」
「いや・・お前はまず人を巻き込まないところから始めろ。」
ブーツホルツのため息がさらに爆笑を誘った。
その夜、すっかりいい色に焼けたグーデリアンが、ファクトリーに近い小さなアパートメントに戻ったのは深夜に近い時間だった。
まずシャワーを浴びてほこりを落とし、電気をつけずにリビングを歩くと、ハイネルの部屋のドアの下から灯りが漏れている。
そっとドアを開けると、まだパソコンの前に座ってなにやら仕事をしているハイネルと目があった。
「ただいま~ん」
「あぁ、イベントご苦労。結果はどうだった?」
「えーと、メンバー足りずに見事びりっけつでした。・・まだ仕事?」
グーデリアンは傍らにあるシングルベッドに腰を下ろした。
本当に仕事用のものしか置いていない小さな部屋をぐるりと見回す。
「本社がらみの書類だけだ。」
「ふーん。」
「そこで寝るな。移動がめんどくさい。」
スタッフがいるうちはデータ取りと改良に目いっぱい奔走し、デスクワークに手がつけられるのはついつい深夜になってしまうのが常だった。
おまけに、資金と引き換えの本社業務、たまには別チームからのOEM依頼まで。
この合間にレースやってるんだから、ブーツホルツじゃないけれど誰も頭が上がらない。
そして、いつも上位にはいるくせに、自分がピンチになると放り出してフォローに走ってくる。
誰だったか、二人がかりなんてずるいと言われたこともあったよな。
俺、ものすごく幸せだと思ってるけど。
でも、そこは、きちんとハイネルに勝ってほしいっていうのもあって。
お父さんになんか厳しいことも言われているみたいで、それはそれでほっとくとどこまでも走るハイネルを心配してのことなんだろうけど。
「こら。」
うとうととした頭で色々と考えていると、頬を痛いほどつねらてグーデリアンは目を開けた。
時計はさらに一時間先をさしていた。
「仕事は終わった。私はあっちの部屋のベッドで寝る。」
「あ、待って待って!俺も行くから!」
飛び起きて、あわてて後をおいかける。
「一日デスクで肩凝ってるだろ?寝る前にマッサージしとかないと!」
表では、激しい喧嘩をしつつも、ハイネルのグーデリアンに対するサポートはまるで王様に対するそれだと例えられることがある。無自覚だから本人に聞いたらきっと否定するけれど。
だからせめて、人から見えないところではお姫様くらいには甘やかしてもきっとばちは当たらない。
-----------
過去記事を手繰ってみたら6年も前なんですね。
多分、今回がさがさっとまとめて書いたらまた6年ほど忘れるんではないかと。
「そういえば、今日はハイネルはどうしたんだ?オーナー枠のおじさま方に拉致されたのか?」
「ほぁ?」
グーデリアンが口いっぱいにバーベキューをほおばったところで、ブーツホルツは唐突に質問を投げかけた。
「ふぃふぉふぉと。ふぉふぃつ。」
「グーデリアンさん、さっぱわかんねぇっす・・。」
レオンがぼそっと呟いた。
「ふぉ・・・。フリッツといい、最近の若い奴はシンプルでいいねぇ。」
「お前が言うか。」
「いやん、ミーなんてまだまだシャイボーイだから。」
くねっとシナを作ってみたグーデリアンに、あちこちから「どこがだ」「ビール噴いた、返せ」等の声が聞こえた。
「いやね、ハイネルはドイツで仕事。主要スタッフも自発的に付いてっちゃったから、今日のシュトロゼックはぼろぼろなのよ。」
居並ぶ面々がうんうんとうなずく。
確かに、いつものオーナー対ドライバーの喧嘩仲裁におけるシュトロゼックのチームワークは恐ろしいほど統制がとれているのに、今日のレガッタではそれがまったく活かされていなかった。
「アオイ対策か?」
「んー、そんなとこ?でも、電話したら1.5時間くらいで来るんじゃない?」
250マイルはあるかという山越えをそのペースで走ったらさすがに苦情がくるかと思うが、あいつなら実際やりかねないな・・と思われているのがハイネルという人間である。
「ハイネルでも、あのマシンは手ごわいのか?」
「みたいねー。フリッツ会見の後、すぐドイツに帰っちゃった。・・て、ブーツホルツのダンナ、えらくハイネルのこと褒めるのね。」
「いや、実際すごいだろう。制作とドライバーとやりながら、常に上位はキープする。
コンストラクターズならスゴウでも太刀打ちできないんじゃないか?。」
「いやいやいや、そうなったら俺とブーツホルツさんのチームワークっしょそこは!」
元気よく手を挙げて発言するレオンに一同が爆笑する。
「ここ笑うとこっすか?!」
「いや・・お前はまず人を巻き込まないところから始めろ。」
ブーツホルツのため息がさらに爆笑を誘った。
その夜、すっかりいい色に焼けたグーデリアンが、ファクトリーに近い小さなアパートメントに戻ったのは深夜に近い時間だった。
まずシャワーを浴びてほこりを落とし、電気をつけずにリビングを歩くと、ハイネルの部屋のドアの下から灯りが漏れている。
そっとドアを開けると、まだパソコンの前に座ってなにやら仕事をしているハイネルと目があった。
「ただいま~ん」
「あぁ、イベントご苦労。結果はどうだった?」
「えーと、メンバー足りずに見事びりっけつでした。・・まだ仕事?」
グーデリアンは傍らにあるシングルベッドに腰を下ろした。
本当に仕事用のものしか置いていない小さな部屋をぐるりと見回す。
「本社がらみの書類だけだ。」
「ふーん。」
「そこで寝るな。移動がめんどくさい。」
スタッフがいるうちはデータ取りと改良に目いっぱい奔走し、デスクワークに手がつけられるのはついつい深夜になってしまうのが常だった。
おまけに、資金と引き換えの本社業務、たまには別チームからのOEM依頼まで。
この合間にレースやってるんだから、ブーツホルツじゃないけれど誰も頭が上がらない。
そして、いつも上位にはいるくせに、自分がピンチになると放り出してフォローに走ってくる。
誰だったか、二人がかりなんてずるいと言われたこともあったよな。
俺、ものすごく幸せだと思ってるけど。
でも、そこは、きちんとハイネルに勝ってほしいっていうのもあって。
お父さんになんか厳しいことも言われているみたいで、それはそれでほっとくとどこまでも走るハイネルを心配してのことなんだろうけど。
「こら。」
うとうととした頭で色々と考えていると、頬を痛いほどつねらてグーデリアンは目を開けた。
時計はさらに一時間先をさしていた。
「仕事は終わった。私はあっちの部屋のベッドで寝る。」
「あ、待って待って!俺も行くから!」
飛び起きて、あわてて後をおいかける。
「一日デスクで肩凝ってるだろ?寝る前にマッサージしとかないと!」
表では、激しい喧嘩をしつつも、ハイネルのグーデリアンに対するサポートはまるで王様に対するそれだと例えられることがある。無自覚だから本人に聞いたらきっと否定するけれど。
だからせめて、人から見えないところではお姫様くらいには甘やかしてもきっとばちは当たらない。
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過去記事を手繰ってみたら6年も前なんですね。
多分、今回がさがさっとまとめて書いたらまた6年ほど忘れるんではないかと。
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もちろんそれらの作品とはなんら関係はありません。
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