「いっそ、冬にやればいのに・・」
レースシーズン、牛よりも我慢強い忍耐の人(多分)フランツ・ハイネルが何度となくぼやくセリフが今年も出現し、スタッフたちは夏が来たことを実感するのだった。
「大体、熱というものは起こすより冷やすほうが効率が悪いんだ。」
「気温が30℃を超えたら観客の安全のためにもレースは中止にするべきだ。」
もっともらしいセリフを吐きつつも、結局は暑いのが苦手、と言いたくないヤセガマンは称賛するべきなのか。
予選前のウォーミングアップを終えてハイネルはピットでレーシングウェアの上を脱ぎ、サーキュレーターで体を冷やしながらデータ解析を行っていた。
薄手のシルクのインナーシャツは肌にへばりつかず風を通すものの、かき混ぜても湿度の高い空気が衣類とハイネルの間にじっとりとまとわりついている。
スポットクーラーもないではないが、排気の熱さを考えると使う気にもなれないし、日頃暑さに慣れているスタッフ達は案外平気で動いているのがなんとも居心地が悪い。
いっそ耐久レースのようにビニールプールに水をはってくれ・・と言いたいのを堪えて、ハイネルは氷入りのアイスティーに逃げ場を求めていた。
「たっだいまー」
「お前・・どこに行っていた・・」
温度上昇によって、気化して引火寸前のゴキゲンがさらに斜めになりそうなのを察してスタッフが思わず帯電チェッカーを握りしめる。
「いいじゃん、ちゃんと俺の時間には帰ってきただろ。それよりさ、これ買ってきた。5分休憩しようぜー。」
差しだされた袋の中には、霜に包まれたアイスバーが山ほど入っていた。
「フレーバーは何?」
「チョコとコーヒーと、ストロベリー・・か?。チョコ欲しい奴手上げろー。」
「たまにはいいことするじゃないかジャッキー。」
「たまにってなんだよ。」
「どうせ、かわいこちゃんが売ってた~とかだろう。」
「あ、わかる?素通り出来なかったわけ。でもヘイ・ハニーから0.5秒で後から怖いママが出てきたんだぜ。俺の失恋ファステスト・ラップ。」
「ざまぁみろ。」
「ハイネルさん、どれ食べますか?」
「あー・・・コーヒーを。」
がっつり甘いものはちょっと・・と言いたいところが霜の誘惑に受け取ってしまったハイネルは、アイスバーの包みをぱりぱりとはがし、少し端をなめてみた。
思ったよりは甘くないが、さて一本どうしようかと思い始めたころ、アイスバーは端からとろとろととろけ始めた。
「!?」
あわててこぼれかけた液をなめとる。するとまた片方から滴が落ちそうになって、いそいでひっくり返し、そちらを強く吸う。
(気化熱か!)
サーキュレーターの真横で食べていた自分の迂闊さを恥じつつ、風の当たらないほうへ移動したが、溶けかけたアイスバーはあらゆる部分から崩れかける。ハイネルは口の端についたクリームを舐めながら一心不乱にアイスバーを口に運ぶ次第となった。
それでも1本を胃に収める頃には体の中が冷やされ、楽になるのを感じていた。
(たまにはいいことをするじゃないか、グーデリアンのくせに。)
他のスタッフたちも、うんざりしていた気分が一新されたようで、ゴミをまとめて再び気持ちよく作業に戻っていく。
ほっと一息ついてバーの最後をなめとり、さぁ仕事を再開するかとハイネルが再びタブレットを手にとったところに、グーデリアンが意味深な笑みを浮かべて近寄ってきた。
指でちょいちょいと内緒話のある仕草をされて、思わず近寄ったハイネルの耳元で、グーデリアンが囁く。
「は?」
ハイネルの耳元で一言つぶやいて、にやりと笑いながらグーデリアンはヘルメットをかぶっていってしまった。
(あんた、エロい・・・・って?)
あとに残されたハイネルは意味がわからず首をかしげるばかりであった。
その後しばらくグーデリアンの謎のアイスバーの差し入れは続き、何度目かに偶然出くわしたリサに「お兄ちゃんこういう顔でアイス食べてんの、自覚してる?」と証拠写真を突きつけられるまで、ハイネルはサービスをし続けてしまったのである。
レースシーズン、牛よりも我慢強い忍耐の人(多分)フランツ・ハイネルが何度となくぼやくセリフが今年も出現し、スタッフたちは夏が来たことを実感するのだった。
「大体、熱というものは起こすより冷やすほうが効率が悪いんだ。」
「気温が30℃を超えたら観客の安全のためにもレースは中止にするべきだ。」
もっともらしいセリフを吐きつつも、結局は暑いのが苦手、と言いたくないヤセガマンは称賛するべきなのか。
予選前のウォーミングアップを終えてハイネルはピットでレーシングウェアの上を脱ぎ、サーキュレーターで体を冷やしながらデータ解析を行っていた。
薄手のシルクのインナーシャツは肌にへばりつかず風を通すものの、かき混ぜても湿度の高い空気が衣類とハイネルの間にじっとりとまとわりついている。
スポットクーラーもないではないが、排気の熱さを考えると使う気にもなれないし、日頃暑さに慣れているスタッフ達は案外平気で動いているのがなんとも居心地が悪い。
いっそ耐久レースのようにビニールプールに水をはってくれ・・と言いたいのを堪えて、ハイネルは氷入りのアイスティーに逃げ場を求めていた。
「たっだいまー」
「お前・・どこに行っていた・・」
温度上昇によって、気化して引火寸前のゴキゲンがさらに斜めになりそうなのを察してスタッフが思わず帯電チェッカーを握りしめる。
「いいじゃん、ちゃんと俺の時間には帰ってきただろ。それよりさ、これ買ってきた。5分休憩しようぜー。」
差しだされた袋の中には、霜に包まれたアイスバーが山ほど入っていた。
「フレーバーは何?」
「チョコとコーヒーと、ストロベリー・・か?。チョコ欲しい奴手上げろー。」
「たまにはいいことするじゃないかジャッキー。」
「たまにってなんだよ。」
「どうせ、かわいこちゃんが売ってた~とかだろう。」
「あ、わかる?素通り出来なかったわけ。でもヘイ・ハニーから0.5秒で後から怖いママが出てきたんだぜ。俺の失恋ファステスト・ラップ。」
「ざまぁみろ。」
「ハイネルさん、どれ食べますか?」
「あー・・・コーヒーを。」
がっつり甘いものはちょっと・・と言いたいところが霜の誘惑に受け取ってしまったハイネルは、アイスバーの包みをぱりぱりとはがし、少し端をなめてみた。
思ったよりは甘くないが、さて一本どうしようかと思い始めたころ、アイスバーは端からとろとろととろけ始めた。
「!?」
あわててこぼれかけた液をなめとる。するとまた片方から滴が落ちそうになって、いそいでひっくり返し、そちらを強く吸う。
(気化熱か!)
サーキュレーターの真横で食べていた自分の迂闊さを恥じつつ、風の当たらないほうへ移動したが、溶けかけたアイスバーはあらゆる部分から崩れかける。ハイネルは口の端についたクリームを舐めながら一心不乱にアイスバーを口に運ぶ次第となった。
それでも1本を胃に収める頃には体の中が冷やされ、楽になるのを感じていた。
(たまにはいいことをするじゃないか、グーデリアンのくせに。)
他のスタッフたちも、うんざりしていた気分が一新されたようで、ゴミをまとめて再び気持ちよく作業に戻っていく。
ほっと一息ついてバーの最後をなめとり、さぁ仕事を再開するかとハイネルが再びタブレットを手にとったところに、グーデリアンが意味深な笑みを浮かべて近寄ってきた。
指でちょいちょいと内緒話のある仕草をされて、思わず近寄ったハイネルの耳元で、グーデリアンが囁く。
「は?」
ハイネルの耳元で一言つぶやいて、にやりと笑いながらグーデリアンはヘルメットをかぶっていってしまった。
(あんた、エロい・・・・って?)
あとに残されたハイネルは意味がわからず首をかしげるばかりであった。
その後しばらくグーデリアンの謎のアイスバーの差し入れは続き、何度目かに偶然出くわしたリサに「お兄ちゃんこういう顔でアイス食べてんの、自覚してる?」と証拠写真を突きつけられるまで、ハイネルはサービスをし続けてしまったのである。
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